バクスタ住民の独り言ブログ

浦和レッズ観戦記、雑感。バクスタでだいたい一人観戦してます。スタジアムに通いだしたのは2009年ごろから。

ミシャの何が”限界”だったのか?

この文章の8割くらいまでは、セレッソ戦後に書きました。
ですので、ミシャ解任前であり、タイトルもミシャサッカーは限界なのか?でした。
解任前後で書きたい内容にはおおむね変化ないので、途中までの文章はそのまま、加筆しました。


2017年シーズンの序盤からを振り返り、浦和が現在の苦境に陥った原因を考えたいと思います。
まず私のスタンスを言ってしまうと、”ミシャサッカー”のサッカーそれ自体が限界だとは思っていません。
確かに、今季の浦和はよりリスクを取る形になり、失点が増えました。
しかし、試合をよく見れば明らかなように、今の浦和は低い位置でブロックを作っていても失点しています。
私は今のこの状況は、主力の選手たちのマインドセットが原因かと考えています。
そしてそれは、ミシャのチームマネジメントが招いたと考えています。


チームマネジメント、この意味で、私はミシャに限界を感じています。
ミシャを解任すべきだとは、現時点ではまったく思いません。
しかし、来季もミシャに浦和を任せていいのかという点については懐疑的です。


シーズン開幕~4月7日仙台戦
シーズンは、ゼロックスの敗戦で幕を開けました。
ゼロックスでも、リーグ開幕の横浜FM戦でも3失点。
この時期から、今季失点が多くなることは誰もが予想していたと思います。
序盤の失点の形は、特に森脇の裏を突かれてからのマイナスのパスとセットプレーでのニアが目立ちました。
失点はしていましたが、点がとれていました。
また序盤は、1点目から早い時間帯で2点目を奪うことが多かったですね。
ACLでもホームで全勝し、2年連続でのGL突破を決めます。
リーグでも開幕4連勝の神戸に完勝し、ベガルタに大勝するなど、相手を圧倒する試合がいくつもありました。
試合を見ていても、本当にいい試合をしていると感じました。


4月16日FC東京戦~4月26日WSW戦
FC東京戦で、ミシャは昨季見られなかった采配を振るいます。
ミッドウィークの11日に上海とのアウェイゲームを戦った厳しいコンディションの中で、14分にラファと興梠の2人で崩した得点を守り切る形で勝利します。
この試合の直後は、ミシャは今年かなり結果にこだわっているな、と感じました。
そして6点を取って大勝したWSW戦。
印象的だったのは、3点リードしてほぼ試合が決まった後で、興梠とラファを途中出場されたことです。
結果的にこれによってもう3点が入ったわけですが、控えのメンバーを試す絶好の機会でもありました。
監督の意図は、興梠とラファのコンディション調整とコンビネーションの向上だと思って
納得はしましたが、今から思えばこの前後から興梠・ラファ依存とも言える状態になっていたように思います。
ACLを戦う中、コンディションが厳しい試合が増える中、興梠とラファで1点取って守り切る、というFC東京戦での成功を、一つのオプションに考えていたのかもしれません。


4月30日大宮戦~5月14日新潟戦
WSW戦での大勝した段階で、浦和は40試合連続得点していました。
攻撃力に絶対の自信を持っていた浦和にとって、この時期選手たちが意識していたのは早めにセーフティーリードを得ることだったのではないかと推測しています。
ここで、失点をゼロに抑えれば・・・とならないのはミシャが監督である以上はしょうがないです。
この考え方自体はそこまで問題ではないと思います。
1点のリードでは、どんなに硬いチームであっても事故のような失点で勝ち点を落とすことがある。
失点をしなければ負けることはないけれども、2引き分けよりも1勝1敗の方が勝ち点が多いのがサッカーです。
しかし、大宮鹿島でスコアレスで連敗。
これはやってる方もショックだったでしょう。
しかし、この2試合はそんなに悪い試合をしていたとは思いませんでした。
そして2連敗で迎えたアウェイ新潟戦で大勝します。
私は、この新潟戦でこの後の落ち込みが確定的になったと思っています。
この試合、先制されるものの前半だけで5点を取りました。
でも後半は本当に酷い試合をしていたように思います。
4点をリードして、流しているようにしか見えませんでした。
かなり攻められてもいましたが、結果的に失点もしませんでした。
この試合以降、チームから規律が失われたと考えます。
規律崩壊の原因は、いくつもあると思います。


より攻撃的なポジショニングと判断の高度化
攻守において、浦和の選手たちは、他クラブの選手たちに比べて、相対的に難しい判断を要求される場面がとても多い。
そして正しい判断を、早く行わなければならない。
時間の経過で正しい判断は変わってしまいます。
この判断力を高いレベルで維持し続けるのは、ちょっと想像がつかないですが、とても難しいのだと思います。
攻め切るために、より攻撃的なポジションを取らなければならない、しかし、リスク管理もしなければならない。
浦和のスタイルだと、中途半端に自陣に残っていることは、スペースを埋めているというより”いなくてはならない場所”にいないことによってボールをロストするリスクを高めてしまいます。
昨季はしかし、”上げ過ぎない”という選択肢があった。
それを、今季は極力上げていくことになった。
ハーフコートゲームという言葉が出ていたのが象徴的でした。
90分間の中で、正しい判断をし続け、ミスが起きて被カウンター時はより長い距離を走らなければならなくなりました。
浦和が勝てなくなった時期は疲労に加えて暑さを感じる時期からで、この疲労と暑さの影響は大きいでしょう。


判断力、”賢く走る”ということ
4月の連勝中、ミシャが何度か、「たくさん走ればいいわけではない、正しく走れば走る量は抑えられる」というようなニュアンスのことを言っていたと記憶しています。
オシムの”考えて走る”もこのような考え方ですよね。
サッカーは、常に全力疾走していては90分持ちません。
スプリントするところとしないところは見極める必要があります。
ここの選手たちの判断力を、ミシャは昨季を通して信頼していたのだと思います。
だから、運動”量”について強調することが少なくなったのだと。
でもこれは、時期尚早だった、と現時点では言わざるを得ないと思います。


選手起用ー興梠のシャドー
序盤で圧巻の得点力を見せたラファを組織に組み込むにあたって、守備面を考慮してラファをトップ、興梠をシャドーで起用しました。
この組み合わせは、猛威を振るいました。
ミシャ監督からすれば守備面でも適切な判断ができれば、武藤のようにスプリントを繰り返さなくても、運動量で劣る興梠をシャドーにおいてもいけるとの考えでしょう。
また、失点のリスク以上に得点できるのであれば、収支は合います。
興梠とラファを同時起用したいというのはとてもよくわかります。
シュートチャンスを多く作ることができるようになった浦和にあっては、前線の決定力がそのまま得点数に反映されることが比較的多い。
1点取られたら2点取り返すサッカーなので、何点取れるかは勝敗に直結するんです。
ミシャ監督が敗戦後によく「相手の少ないチャンスが決まり、我々は多くのチャンスを逃してしまった」というようなことを言うのは、まさにこのことで、これを避けるための興梠・ラファ併用なのだと思います。
しかしこの興梠のシャドー起用が、2016年シーズンにあった規律を失わせた要因の一つだと考えています。
2016シーズン、シャドーの選手はかなり守備に貢献していて、走り切って選手交代することも多々ありました。
特にボールを失った瞬間のネガティブトランジションが良くて、ファールで潰すことも含めて相手のカウンターをかなり防いでいました。
しかし興梠は、守備での運動量も昨年のシャドー陣よりも少ない上に、守備での切り替えが遅い。
量より質で、量の減少を補おうとした結果、春までは良かったものが、暑さと疲労の蓄積と共に量の低下をクオリティでカバーできなくなったんだと思います。


得点の増加と緩み
また、今季は大量得点の誘惑が加わった。
今季の浦和の得点力は、昨季よりも明らかに上がっています。
ボールを前に運んだ時のチャンス構築率が高い。
常に全力で走ることはできない中で、走る機会を、選手たちはある程度選ばなければなりません。
得点の増加により、攻撃陣と守備陣で意識の乖離が大きくなったと思います。
より得点を多く取れば勝てるわけですから、攻撃陣が守備に走力をかけたくなくなるのは自然なことです。
2点、3点リードを奪えれば、多少楽ができる。
こういう意識も、多少なりともある/あったと読んでいます。
先制されるなど、点が欲しいと思えば思うほど、前に前に意識が行き、規律が失われる。
実はこの意識の乖離は、ずっと表面化していないだけで存在していたと思います。
西川とDFの守備陣で、無失点試合の後に円陣を組んでいましたよね。
川口であったトークイベントで、水沼さんが「前線も含めた全員で円陣を組めるようにならないと」と言っていたのをよく覚えています。


失点の増加と自信の喪失
浦和の守備陣は、受ける守備に特徴のある選手はほどんどいません。
前に出て奪う守備ができないと、強みを発揮できません。
そして、前からのプレスが十分にかからない状態で前に出ていくのは危険です。
今季、森脇と槙野を高めに置き続けていたこともあり、相手の縦パスに対してDF陣が強く当たりに行ける回数が激減しました。
それがさらに、前に行って入れ替わられる失敗体験の増加にもつながり、どんどん当たりにいけなくなり、行くべき時にも行く判断ができない、あるいは遅くなります。
そしてついには、前線がスプリントをかけてパスコースを限定できた時でも、簡単にポストプレーをされるなどして前線の守備を無駄にしてしまい、前線の守備の失敗体験をも積み重ねます。
完全の負のスパイラルに入ってしまい、誰も、どうしていいかわからなくなった、これが浦和の守備崩壊だと思います。


チームマネジメントの限界ー選手を入れ替えられない
チーム状況の悪さとその原因は、監督も重々承知していたと思います。
スタンダードなチームマネジメントであれば、正しい判断ができないのであれば注意して、それでもできなければできる選手に変えなければならない。
フィジカルコンディションが整わないのであれば、やはり選手の入れ替えを考えてしかるべきです。
しかし、ミシャのマネジメントでは、そう簡単にはできない。
ミシャのマネジメント術はいろいろな表現をされますが、私は信頼のマネジメントと呼びたい。
戦術を遂行できるか否かという評価軸があり、評価が高い順に信頼する。
信頼されることで、選手はよりいいプレーをできることを期待する。
少し悪いプレーが続いたとしても、基本的な信頼は揺らがない。
このマネジメント術は、個人的には好きではないけれど、そんなに悪いものだとは思っていませんでした。
リスクをかけるミシャサッカーにおいて、”ミスをできる”というのは重要な要素で、常にチャレンジさせるミシャは、ミスが続いたからと言って評価を下げるのは下策だった。
この、チャレンジを奨励する、という意味において、このマネジメントを評価していました。
そして昨年までは、これで実際に勝ち点を積み重ねてきたわけです。
しかし今年、これが限界を迎えた・・・のかもしれないです。
その原因は、いくつもあるとは思いますが、まずは主力選手の不調でしょう。
西川・槙野は、シーズンの初めから明らかに何かおかしかったように思います。
阿部ちゃんもコンディションに苦慮し、興梠もシャドーで消耗していきました。
柏木と森脇は、全体の落ち込みに引きずられていたような印象です。
同時に、複数の”替えが効かない”選手が調子を落とした。
これは、ミシャでなくとも難しい。
同じくらいの控えがいるのなら、スタメンをほぼ全員変えたいような状況に追い込まれてしまったような感じでしょうか。
無論、これまで控えにチャンスがなさすぎた結果だとも言えるのですが。。。
そしてそれに加えて、今季はどうしてもタイトルが欲しい、勝ち続けなければならなかったから、だと思います。
今季のノルマのようなものが設定されていたのかはわかりませんが、負けられないという意識の強さがスタメンの固定をより強めてしまったのだと予想しています。


自らの哲学にこだわり続けるー解任についての感想
川崎戦で、らしくない戦い方をしたのも、札幌戦でのハーフタイムの3枚替えも、絶対に負けたくなかったからだと思います。
私は、札幌戦はさすがに選手を入れ替えてくると思っていました、ミシャに残された方法はそれしかないと思っていたので。
しかし、ミシャの選択は2部練習。
最後まで、自らのチームマネジメントは崩しませんでした。
私は、ここで解任でなかったとして、チームが復調する可能性は十分にあったと思っています。
しかし、それがいつ訪れるのか、また不調期が来た時にすぐ対処できるのか、その点について、ミシャに説得力はなくなっていました。
なので、このタイミングでの解任は納得できます。
それでも、もやもやしてしまうんですよね。
それはきっと、ミシャが誰よりも、浦和を優勝させたいと思っていて、選手たちが、ミシャで優勝したいと思っていたのを感じていたから。
札幌戦後半の鬼気迫る戦いを見たあとだからなおさらそう思ってしまうのかもしれません。
クラブの、サッカーは継続するという方針は100%支持します。